AppleがVision Proの発表後、たちまち話題になった「空間コンピューティング」。
現実世界の空間上にアプリやオブジェクトを配置して、作業やコンテンツを楽むことを可能にする新たな技術です。
Meta Questでは2Dアプリの同時起動は3つまでだったり、ウィンドウを空間上の好きなところに配置できないといった制限があり、Vision Proのようには使えない現状があります。これではQuest 3のカラーパススルーも本領を発揮できません。
Quest Storeで入手できる「the spatial app」
今回紹介するアプリは、そんなMeta Questの弱点を解消する(かもしれない)空間コンピューティングアプリ「the spatial app」を試してみたので、体験を共有します。
前提として、今回使用したQuest 3にはアイトラッキングセンサーが非搭載なので、手かコントローラーで操作することになります。
今のところはアイトラッキング対応のQuest Proでもハンドトラッキングとコントローラーのみの対応です。(今回は屋外で使用しましたが、センサーやカメラ保護の観点からMeta公式では推奨されていません。)
アプリドロワーはモロVision OS
左の手のひらを自分に向けると、アプリドロワーを開くボタンが表示されます。これを指で押すと、ほぼVision OSなアプリドロワーが表示されます。
対応アプリについては、ストリーミング系のAmazon Prime Video、Disney +、Apple TV +、YouTube、Spotify、Apple Musicなどに対応。今のところNetflixアプリはありません(コンテンツ保護の関係でブラウザでも視聴できませんでした)。
そのほかにもノートアプリのNotion、Keep、ChatGPTなどが利用できます。
基本的にはWebで動作するアプリが利用できるようです。
ウィンドウは好きなように配置できる
Vision OSのように、ウィンドウは下部のバーを掴んで動かします。リサイズも同様に、右下にカーソルを合わせて掴んでドラッグします。
アプリは複数起動できますが、3つくらい同時に起動すると動作がもたつきます。このあたりは最適化が進めば改善されるでしょう。
また、開いたアプリとウィンドウの位置は記憶してくれるので、本アプリを開き直してもレイアウトを維持できます。
シネマモードもあります
Vision ProのEnviromentsのようなモードもあります。YouTubeやApple TVなどでフルスクリーンにした際に、画面上部にカーソルを合わせると”Enter cinema mode”というボタンが表示されます。
これを有効にすると、画面の周りのパススルー映像が暗くなり、より映像に没入することができます。筆者は未だVision Proは体験したことがないのですが、特に本機能がそれらしいです。
ちなみに、Amazon Prime VideoはQuest 3がWidevine L1非対応であるためHD再生できませんでした。
ウィジェット配置やPCミラーリングに対応
まだ種類は少ないですが、時計や簡単なメモができるウィジェットを空間に配置することができます。
PC画面のミラーリングは公式アプリか、Googleリモートデスクトップの2つに対応しています。しかし、公式アプリの方は画面が乱れて使えず、リモートデスクトップは遅延が大きく実用的にはほど遠いです。
今のところは、Vision Pro風の空間コンピューティングを、ちょこっと体験できるくらいのアプリです。コンテンツ消費やPC作業で使えるかと言われると微妙ですね。
本アプリはMeta Quest 2、Meta Quest 3、Meta Quest Proに対応し、Meta Storeにて990円で利用可能です。
ちなみに、この記事を書いている際にUIの変更がありました。Appleからの訴訟を回避するためだそうで、インターフェースがVision OSと比べて若干差別化されました。
MetaもMRにおけるUI/UXを開発中
余談ですが、Metaも空間コンピューティングを意識したUIを開発中だそうです。
MetaのCTOであるAndrew Bosworth氏は、「複数のアプリやウィンドウ管理のUX/UI更新は期待できる?」という質問に対して以下のように回答しています。
はい、もちろんです。これは「Apple Vision Pro」が登場するずっと前から、私たちが注目し、時間を費やしてきたことです。
(中略)
コアUIインフラストラクチャの一部を作り直すことにしばらく取り組んでおり、順調に進んでいます。ですから答えはYESです。タイムラインはお伝えできません。すぐにというわけではありませんが、確実に進行中です。
(Andrew Bosworth氏のInstagramより)
なんと、Vision Proが登場する前から空間コンピューティングのような機能を検討しているそうです。加えて、しばらくの間、一部のUI基盤を作り直している最中であることも明かしました。
いつになるかは分かりませんが、ゲームだけでなく映像コンテンツの消費や作業に使いたいユーザーにとっては、待ち遠しいアップデートですね。